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【150号】 POAの世界観とDOAの世界観

■POAの世界観
POAの世界観とは、与えられたインプット(I)から要求されるアウトプッ
ト(O)を、いかに速く安くうまく作るかを課題とする世界観だと考えます。

新入社員は会社に入って仕事を与えられるわけですが、要求された成果物を速
く安くうまく作った人が評価され、また自分でも成長したと満足することがで
きます。I→Oのためのプロセス(P)が課題であり、Pを行うことによって
給与が支払われると実感します。

I→Oを達成するPにはP1、P2、P3などいろいろあって、工夫の余地が
あり、創造性が発揮でき、自己実現の楽しみも得られます。代表的なPである
プログラミング業務の面白さの大きな部分は、このPの追求からくるようにも
思われます。しかしPに注力すると、ローカルなHOWの比重が高まり、与え
られたIOの外の世界への関心が薄れ、オタク化して、アンチ標準化の弊害を
招くリスクがあります。

会社全体の業務を考えると、大きなPを行って、大きなOを生み出し、収益を
得ているわけですが、そのために営業、生産、人事、経理など、少し小さな同
種のPを行う部門に分かれて仕事をしています。このPの分解は、理論的には
個々のIOの生成からプログラムの1ステップにいたるまで行われうるのでしょ
うが、「そのメリットのある範囲まで」ということで、一般にはある粒度まで
のWBS(Work Breakdown Structure)が作られます。

このトップダウンのPの分解は、きわめて自然に行われているわけですが、多
くの場合次のような欠陥を持っています。
・Pの定義が名称/自然言語で行われているため、どのような情報が扱われて
 いるかが明示されない
・会社全体からというより、部門レベルからのミドルダウンの分解であり、
 部門間の調整ができていない

したがって、Pの結果であるOが、誤解の発生しないように可視化されていま
せん。すなわち、P:HOW、O:WHATの対応において、WHATが規定
されずにHOWだけが曖昧に規定されており、
 →P1→O≒I→P2→
のように、先行するP1のOと、これを受けとる後続のP2のIが必ずしも一
致せず、しばしば食い違い、接続トラブルを発生させることになります。

■POAからDOA1.0
Pの粒度を規定しても、一般にはPは直列とは限らず、たとえばこのOをP3
もIとして受けとるなど、ネットワーク状になります。したがって出力する側
のOと、受けとる側のIがすべて一致するためには、かかわるPのすべてのI
Oによって形成されるデータ通信場?そのIOに含まれるデータがすべて正し
く位置づけられているDB?を想定し、調整/標準化を行わなければなりませ
ん。すなわち、HOWに先立ってWHATを標準化し確定するDOAが必須に
なります。標準化は関係者全員による、ある価値観にもとづく最適化を必要と
しますので、将来の変化に対する洞察力や対立する利害を調整する政治力が必
要とされる場合が多々あります。

要するに、DOAの世界観は、「通信場ありき、その中でプロセスが機能する」
というものであり、「自分の業務を他者の業務とのかかわりの中に位置づける、
より広い進化した世界観を作る」、したがって「POAは自分/地球を中心に
据えた天動説的、DOAは自分/地球でなく通信場/太陽を中心に据えた地動
説的」であり、「DOAはPOAよりひとまわり広い視野から考えている」と
言うことができると思います。

しかし、DOAにおいてもその通信場形成にかかわるPの選択によって、限界
が発生します。実際、1970年代以降、DBMSを活用して、アプリケーシ
ョンごとの通信場を共用するアプリケーションシステムが作られたわけですが、
多くの企業において、Pの選択が個別アプリケーション内に閉じていたために、
相互に連携できない孤島システム、いわゆるSILOシステムが乱立すること
になりました。私は、これを「DOA1.0」と呼んでいます。

■DOA1.0からDOA2.0
これを突破するためには、Pの選択をアプリケーション横断/全社に広げる必
要があります。このやり方には、次の2つ
 (1)モノリシック(1枚板的)
 (2)フェデレーション的(連邦的)
があるかと思われます。

(1)はアプリケーションごとの通信場を単純に全社通信場に拡大するもので、
初期のERPは、このアプローチだったかと思われます。(2)はアプリケーシ
ョンごとの通信場を残しつつ、この上位レベルに全社レベルの通信場を作るも
のと言えます。これは「地動説によって太陽系を認識したが、さらに場を銀河
系にまで拡大するもの」と対比できるように思います。

通常、全社システムを一挙にスクラップ&ビルトすることはできませんので、
今後もアプリケーションごとに、順次開発/改造しなければなりません。タイ
ミングが異なれば、異なったITを使う必要が出てきます。またビジネス環境
の変化に対応して、システムへの要件が常時変化し、これに対応しなければな
りません。この場合、大部分の変化はアプリケーション内で対応できますので、
速く安く実現するためには、(1)よりも(2)が有利と言えます。(2)を採用する
場合は、既に稼動中のレガシーやパッケージについては、他システムとのイン
ターフェースIOを除く内部の詳細は、基本的に隠蔽し関与しない方針を取る
事ができると考えます。

私は、このような個別アプリケーション内通信場とアプリケーション横断通信
場を持つ2階層のDOAを、「DOA2.0」と呼んでいます。DOA2.0
から見れば、DOA1.0は、そのアプリケーションを中心としたPOA的世
界観を持っていると言えますし、またさらに、DOA2.0も企業横断のB2
Bの通信場から見れば、POA的、その中のプロセスだけを考える、閉じた世
界観を持っていると言えます。

■DOAには教育が必要
人はだれしも、その関与する世界を想定し、その中で成果を挙げるべく活動す
るわけですが、当初はこれが小さく、限界に衝突し、かなりの試行錯誤の末、
これを突破してより広い世界を考えるようになるものと思われます。これが、
個別プログラム→個別アプリケーション→個別企業→企業横断、のように非連
続的に行われるために、変革の都度アウフヘーベンのための大きなエネルギー
が必要とされるかに見えます。

「言葉は自然に覚えるが、文字は教育して初めて覚える」とのことですが、同
様に、「POAは自然に習得できるが、DOAは教育しなければ習得できない」
もののように思われます。「自分を守り育てる利己は生まれながらに持ってい
るが、他者を守り育てる利他はかなり成長し教育されてからでないと身につか
ない」というのとも似ており、「POA=利己(注)、DOA=利他」といっ
た価値観の対応があるかに見えます。

(注)「利己」というと「悪い」という意味に解釈されるかもしれませんが、
自分を守り育てる責任は自分が果たさなければなりませんから必須のものと考
えます。要は、利己と利他のバランスが課題だと考えます。また利他といって
も、自分の家族、自社、自国など限界があり、その範囲は一般にその人の技量
によって決まってくるものかと思います。

■DOA的世界観の教育方法
われわれは、これまで30年以上にわたって、DOA普及のために、データモ
デル手法の教育を行ってきたわけですが、期待したほどの成果が得られていな
いと、私は感じます。「DBは便利なデータの倉庫であり、SQLなどにより、
ここにアクセスしていかにプログラムを作るかが自分の課題」といったPOA
の発想から抜けられないシステム関係者が多いように感じます。「ビジネス世
界を写像したDBを皆で共有し必要な情報はここから得る、そのために遅れな
くビジネス実態―AsIsとToBe?を反映するDBを維持するのが自分の
仕事」といったデータ/DB中心のDOAの世界観が定着していない企業が多
いように思われます。

そこで最近考えたこと。データモデルの教育では不十分、むしろDBを中心に
これを更新・検索するビジネスプロセスを描くIPFチャートの教育を通じて、
「ビジネスシステムはDBを中心に回っているのだ」ということを体得しても
らうと良いのではないか。特に新入社員に、プログラムメンテやJAVAコー
ディングなどを担当させ、「プログラムを読み、作ることが自分の仕事だ」と
いう認識を刷り込ませるのは、DOA人間を作るという立場からは非常にマイ
ナスではないかと考えました。

そこで、新入社員教育の際、先輩社員による会社業務の紹介の代りに、システ
ム部門とユーザ部門からなる新人の混成チームをいくつか作り、部門別のIP
Fチャート作成を実習させ発表してもらうと良いのではないか。業務フロー表
現技法の習得や業務マニュアルの整備ができ、また「会社とは各部門がDBを
共有して活動しているのだ」という認識が刷りこまれるのではないか、また
「この新人の成長によって、今後ユーザ部門とシステム部門のコミュニケーシ
ョンが改善されていくことが期待される」と考えたのですが、いかがでしょう。