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【127号】DOA2.0の胎動

■5年サイクルで変わるトレンド
今振返ると、弊社データ総研は1985年創立以来一貫してDOAを追求して
来ましたが、世の中のトレンドは、5年サイクルで

 1985−1990 DOA(第1次)
 1990−1995 ダウンサイジング
 1995−2000 Y2K&ERP
 2000−2005 アウトソーシング
のように大きく変わりながら今日を迎えようとしているかに見えます。
■個別アプリからアプリ横断へ
2005年以降がどうなるかが問題ですが、私の仮説にすぎませんが、どうも
再びDOA(第2次)が進行中と思われるので、多々ある例外には目をつぶっ
て、ちょっと悪乗り気味ですがDOA2.0として、以下述べてみたいと思い
ます。
20年前のDOA1.0は、メインフレームのOLTP型RDBMSを用いて
個別アプリの統合を図るものでした。しかし今回のDOA2.0は、疎結合を
サポートするWebのDWHを用いてアプリ横断の、すなわち全社の統合を図
るものといえます。
DOA1.0の目的は省力化で、観測・発生データを扱うオペレーショナルユー
ザの支援を行う守りのシステムでした。DOA2.0の目的は事業パーフォー
マンスの向上で、意思決定データを扱うLOB(Line of Business)の支援を
行う攻めのシステムです。
■フェデレーションアーキテクチャ
両者の大きな違いはそのスコープの大きさに起因するものが大きいかと思われ
ます。そこには文化−用語すなわち具体的にはコード体系やデータ定義−の異
なる複数のアプリケーションが含まれますので、その構造はモノリシックアー
キテクチャではなく、2階層のフェデレーションアーキテクチャになってきま
す。すなわち個々のアプリ内でのデータ流通の問題と、アプリ間のデータ流通
の問題を分けて考えようというわけです。
これは国道1号線や東海道線はそれとして残し、広域の交通を東名高速道路や
東海道新幹線で解決したのと同様の発想といえます。あるいは日本語、英語、
中国語はそれとして残し、変換によってこれらの間のコミュニケーションを図
ろうというのにも似ています。日本語の中では「古池や、蛙飛び込む水の音」
のニュアンスを共有する必要があるとしても、国語間で通じさせなければなら
ないものは、発注や請求など疑義の発生しにくい明快な情報までではないかと
考えるわけです。
■システムに完成はない
DOA1.0の時代は、開発後10年も経つとスクラップ&ビルトが企画され
ましたが、DOA2.0ではもはや全社再構築などは不可能であり、不断の部
分再構築を計画しなければなりません。かつてはしっかり要件定義して開発す
ればマイナーな保守でしばらくは運用できるという発想から、「開発までが勝
負」といった認識がありました。しかしマルチアプリの一回り大きな全社シス
テムでは、ビジネスニーズの変化やITの進化に絶えず対応しなければなりま
せんので、「いつも工事中で永遠に完成しない。寿命20年−30年として如
何に運用・保守するか」が問われるようになって来ました。
企業情報システムは、ほかに同じものがない一品物で、ハードではプラントと
似ていますが、そのままでは見えないため可視化に工夫がいるだけでなく、絶
えず変化するという扱いにくさを持っています。無機体でなくいわば樹木のよ
うな有機体。有機体の樹木は、幹はほとんど変化しませんが、枝葉は夏に茂り
冬にはこれを落として環境の変化に対応しています。システムの部品化が指摘
されていますが、単なる再利用でなく、このような不変部品と取替部品を見極
めて変化に対応する発想をもたなければならないと思われます。
■IT指向からビジネス指向へ
また個々のアプリは開発時期やそのニーズにより最適化するため、異なったI
Tを採用することになりますので、そのアプリ間インターフェースとなる通信
場は、実装独立を指向しなければなりません。ツールもOLTP型のDBMS
からBPM、ESB、SOA、EDWなど業務寄りのものとなり、メッセージ
もSQLやRPC(Remote Procedure Call)からWebサービスにシフトし
てきます。主担当者もSEやDBAからビジネスユーザやデータ管理者に替わっ
て来ます。
作成すべき成果物の主体が、かつてはアプリプログラムと認識されていたかと
思われますが、DOA2.0ではむしろこれらを支えるデータインフラ、すな
わちメタデータ、リソースデータ、業務横断のメッセージデータにシフトして
きます。
■インフラ投資はROIからは出ない
このようなDOA2.0における投資判断は、かつての素人にも分かるROI
ではないはずです。長期的な見通しに基づく科学的経営判断が求められます。
失われた10年において、IT投資横ばいの日本は、生産性などアメリカに大
きく遅れを取りました。リストラによってユーザ企業のビジネスとITの両方
を理解する要員が弱体化しました。人は新規設計・開発によって最も良く育ち
ますが、これがなくなって「できる若手」が枯渇して来ました。2007年問
題はこれに拍車を掛けます。
下手にERPを入れると、「子供の宿題を親が手伝ってそのときの成績は上がっ
たが実力はつかなかった」と同じことが起こり得ます。システムは経営のツー
ルであり、これを使いこなす人材育成という戦略的課題を忘れてはなりません。
ビジネスとITの両方を理解する「人」がこれからの経営を支えます。IT放
棄は経営放棄につながる心配があります。個別アプリのカットオーバーまでし
か考えないSIerに、経営の視点を期待することは多くの場合、見当違いに
なります。
■3大テーマ
私は2005年から2010年までの5年間を、DOA2.0と言っています
が、そうでなければ取り返しのつかないひどい事態が発生するとの心配と期待
を込めたものでもあります。私は今多くのユーザ企業にとって重要な課題は
・孤島システムを作らないフェデレーションアーキテクチャ
・全社データ流通を支える標準コードとメタデータの整備
・これを実現できるDOA2.0人間の育成
の3つではないかと提言しております。どうぞご検討ください。
(注)DOAではデータ流通問題の解決にはDB通信場が必須と考え、データ
中心のアーキテクチャを考えます。したがってアプリ間レベルにおいてもこの
間を流通するハイレベルメッセージからなる通信場−EDW(Enterprise
Data Warehouse)とかオペレーショナルDWHとか呼ばれる概念DB−を前提
とします。SOAもフェデレーションアーキテクチャを指向しているといえま
すが、否定はしないまでも通信場についての言及ははっきりしないように思わ
れます。DOA2.0では、SOA設計の中心課題は、適切なシステム分割と
EDW設計であると考えます。