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【117号】情報システム設計の方向

■DOAとは何
DOA+コンソーシアムは2年半前、2003年12月に発足しました。この
「+」はこれまでのDOAと違う、これを超えたもの、という思いを込めたも
のでした。しかしここで言う「これまでのDOA」の内容、意味については、
かなり個人差のあるものだったかと思われます。近頃でも「まだDOAなの?」
といった声を聞くことがあります。

「DOAはCASEとともに死んだ過去の技術だ。OO(オブジェクト指向)こそが
これからの技術だ」という理解かも知れませんし、また「ERPこそが解決の
方向だ」ということかもしれません。システム関係者の住んでいる世界は、
思ったより閉鎖的で、新卒でそこに組み込まれた人たちは、そこの文化こそ
が普遍のものと思いがちな傾向があるようです。
■5年ごとのトレンド
弊社データ総研は20年前、1985年10月に創立しましたが、振り返って
みる時、情報システムへの取り組みは、大胆な割り切りが許されるならば、次
のような5年ごとの大きなハンドルの切り替えがあったように思われます。
① 1985−、情シス主導「第1次DOA」
② 1990−、EU主導「分散システム」
③ 1995−、ベンダー主導「ERP」
④ 2000−、アウトソーサー主導「アウトソーシング」
⑤ 2005−、情シス主導「第2次DOA」?

① はバブル期でもありますが、大企業がメインフレーム上でRDBによる実
装に励んでいた時期です。一般には、個別アプリ開発へのDOA適用でしたが、
情報システム部門がガバナンスを握っており、全社リソースデータの標準化に
成功するコンサルJOBも少なくありませんでした。
②はC/S、PCによりEUCが普及した時代です。メインフレームをダウ
ンサイズするケースが多く、物理テンプレート修正開発が行われ、要件定義技
術や、情シスのガバナンスが低下しました。
③ は、インターネットが実用化され、Y2Kを目前にし、ERPの導入がス
タートしました。初期のERPは各アプリをモノリシックに密結合するもので
あり、パートナーも不慣れで、全社リソースデータが整備されていない会社や
情シスのガバナンスが不十分な会社では、ERP導入に苦労があったようです。
④ は不況の時代です。システムコストダウンがテーマとなり、リストラ目的
で開発・運用・保守をアウトソースするケースが続出しました。全社アーキテ
クチャはもちろん、個別アプリの要求仕様すら規定できず、丸投げ状態となり、
ユーザ企業における情シスのガバナンスは最低となった企業も少なくありませ
んでした。
⑤はスタートしてからまだ1年ちょっとですから、大胆な推測しか出来ませ
んが、好況を背景に、②、③、④での行き過ぎを是正する方向にあるかに見え
ます。暗黙知となった孤島システムを可視化し、全体最適をめざすEA
(Enterprise Architecture)やCPM(Corporate Performance Management)、
BAM(Business Activity Monitoring)、そのためのBPM(Business
Process Management)やSOA(Service Oriented Architecture)、これを
支えるMDM(Master Data Management)が話題となっています。また、経営
と情シスの距離が接近したため、J−SOXやセキュリティ対策が、情シスに
おいても大きな課題となっています。いずれも情シスのガバナンスを取り戻す
必要から、DOAの復活が予測されます。
第1次DOAは、欧米流のRDB設計やDFDとして受け取られていたようで
すが、今回のDOAは、全社データ流通(水平統合)およびプログラムレス
(垂直統合)を実現する第2次DOAというべきものです。その核は、リソー
ス、リポジトリ、およびリアルタイムDWH(EDW)からなるデータインフ
ラの確立だと考えます。
■第2次産業革命
こうしてみると、第2次産業革命とも言われる情報革命は、非常に速いピッチ
で進行しているのに驚ろかされます。2010年以降はどうなるのでしょうか。
第1次産業革命はエネルギー革命であり、光や熱はもちろん、移動や運搬、ま
た強い機械力が生活を変革しました。今回の情報革命は何を変革すべくどう進
化していくのでしょうか。
これは自説に過ぎませんが、私は人間生活にとって必須なものとして、衣食住、
群(むれ)、変化対応、変化創造があると考えます。そして情報は、主として
群、変化対応、変化創造に不可欠なものと考えます。群とは家族や会社や国家
です。これと適切にかかわるために情報が必要です。シマウマを探すライオン
にも、渡りを行う鳥にも情報は必要で、良い情報は適切な変化対応を実現しま
す。変化創造は人間だけが行うのではないかと考えますが、良い情報がその成
功率を上げます。エンジンについての良い情報が燃比の高い車をつくり、顧客
についての良い情報が作りすぎと欠品を防止します。
■情報共有の推進
ハードウエアやエネルギーは共有が出来ませんが、情報は共有が可能、コピー
にコストが原則としてかからない、という本質を持っています。高品質という
条件付ですが、共有によって莫大な効果を生むことができますのでこれを推進
する方向で進化が進むものかと思われます。そのためには
  ・ FACT(文章)の形式の標準化
  ・ TERM(用語)の形式と値の標準化
が必要になります。
人間同士ならば、対象は自然言語ですが、形式は母親や学校から学び、正確な
値は辞書によりこれを規定することになります。人とコンピュータの情報共有
には、IOレコードにかかわる2つの辞書、すなわち形式を規定するデータ辞
書(メタデータリポジトリ)と値を規定するリソースDBが必要になります。
自然言語は長い歴史を通じて、ほぼ国別ですが、標準化が出来ていますので、
これを収録し、他言語との変換ルール(英和辞典など)を記述することになり
ます。しかし、コンピュータのかかわる世界は、プログラマとユーザが勝手に
データを決めはじめてから、まだ40年ほどしか経っていませんので、調整・
標準化の素材集めすら簡単ではありません。また自然言語と同様、有限のある
範囲での標準化しかできないと思われますが、その範囲の規定も今後の課題です。
■標準化の条件
情報共有のための標準化−いろいろな立場の人の利害の調整を含む政治的課題
−が推進力になるとして、これをどう進めたらよいのでしょう。関係者が賛同
できる基準として、私は次のような原則を提案しています。
  ・ 概念先行(業務仕様を確定してから実装)
  ・ データ先行(成果物を確定してから処理)
  ・ 全体先行(全体共通仕様を確定してから個別仕様)
  ・ 制約先行(加工制約を確定してから加工処理)
これらはいずれも、「1:nの関係のある場合は、1の側を先に決めるべき」
という原則に帰着できます。もちろんこの場合、1の側を決めるに当たって、
nの側での事前調整が必須です。
なお、制約先行とは加工データに関するもので、たとえば金額、数量、単価の
間に制約
  f(金額、数量、単価)=0
があるとき、
  処理1:金額=数量*単価
  処理2:単価=金額/数量
のようにn個の処理として記述するのは、冗長記述、正規化違反と考えるもの
です。
また全体先行のひとつとして、リソース先行を位置づけます。リソースは各ア
プリケーションから参照される全体システムに所属すると考えるからです。
今後は情報が氾濫し、有効な情報にいかにたどり着くかが問題になるかと思わ
れます。このため自分の周りに関係者と共有できる整然としたDBをいかに構築
できるかが課題になると思われます。とすると、今後の最大の課題は、やはり
このための第2次DOAをさらに発展させたDOA+活動ではないかと思われます
が、いかがでしょうか。