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【第113号】情報システムは有機体

雪が降って、氷が張って、久しぶりに冬らしい冬、インフルエンザも姉歯も、
ホリエモンで影が薄くなっていますが、皆様お元気ですか。
1986年から続けている冬の弊社大型セミナー、通称「DB研」は2月8日(水)
青学会館で行います。まず椿が2005年の約400件の文献から80件を選択
し、これをベースに動向を整理編集してお話します。SCM・CRM・BIなどを支
えるSOA・BPM・EDWなどが話題の中心です。続いて若杉がDAMA参加報
告により海外のDOA動向を紹介します。午後は「新しいIT部門へのチャレンジ」
として、小栗様(日揮)・桜井様(システムトラスト研究所)・重松様(東レ)の3氏
から経営につなぐITをお話いただきます。ふるってご参加ください。
■情報システムの強度
先月発信した「欠陥システム構築を防止するには」に対して、弊社市堀誠治(元
平和情報センター)から次のようなコメントをもらいました。「震度8に耐える情報
システムとは、面白い考え方ですが、建築やモノの製造と情報システムには本
質的な違いがあると思います。情報システムの強度は、システム自体の強度と
それを開発・維持する人間系の強度が密接に絡み合っています。システム自体
を強化する技術は既にたくさんあり、それなりに適用されているのが現状だと思
います。しかし、もう1つの側面である開発・維持する人間系の強化をどう実現す
るかが最大の課題です。この分野の最強の技術であるモデリング技術やデータ
の意味管理の技術も、技術としては十分枯れています。問題は、システムを開発・
維持する人がそれを実適用し、その中でよりその技術を高めてゆくような風土や
仕組みがこの業界にないことです。・・」


■情報システムは有機体
そこで気がつきました。「情報システムは無機の構造体ではない。情報システム
はビジネスシステムの写像であり、ビジネスシステムはビジネス環境の変化に
対応して時々刻々と変化するから、情報システムもこれに追随して変化すべき
有機体だ。これを実現するのは、システム周りの人間だ。人間をセットにして考
えなくてはならない。今まで建物のような無機の構造体としての前提で構築して
きたのではないか。」
「アプリケーションパッケージ導入や丸投げアウトソーシングによりコストダウンを
図れ」という意思決定の前提には「システムも建物や自動車のような無機の構\n造体」という前提があるのではないかと思われました。確かに単純な受発注や
会計処理など、粒度の小さな処理は、ビジネスの変化の影響を受けることもなく
安定していて、無機の構造体として扱うことができますが、事業部全体や企業
全体の粒度で考えると、毎日のように変化が発生し、有機体として扱うことが必
要になってきます。
有機体はニーズ変化に柔軟に対応する必要があります。このためには構造体は、
旧いERPのようにモノリシックでなく、独立性の高い部品から構成されていなくて
はなりません。変化には最小限の部品の変更で対応しなければなりません。
そのために部品の相互関係の鳥瞰的可視化が不可欠となります。
有機体の代表として、人間の身体を考えるならば、代謝とか自然治癒力があり、
また成長や加齢に応じた変化に対応して、その安定稼動が維持されているわけ
ですが、情報システムにおいても、人間が常時張り付いて、ビジネス変化に遅
れなく追随しつつその安定稼動を維持する必要があります。局所的変化対応は、
従来のSEやプログラマで対応できたわけですが、大局的変化には、この全貌を
可視化したドキュメントに加えて、これを活用できる人間が必須となってまいります。
その意味では運転手と自動車だけでは勝てない自動車ラリーと似ているように
思われます。
結局これは、情報システムの大局的ガバナンス担当をいかに用意するかの問題
になります。SI業は与えられた開発に関するQCD(Quality, Cost, Delivery)まで
が課題ですから、SIに期待することはできません。発注側のユーザ企業自身で
用意しなければなりません。その人材をいかに育てるか。経営を強力に支援でき
るIT体制を指向する企業にとって、今後の大きな課題かと思われます。
■人材はシステム開発の成果物
われわれの経験から言えることは、「人材は開発の中で育つ」ということです。
座学やパッケージ導入や保守作業だけでは難しい。「システム開発の成果物は
ソフト/プログラム」といった認識が横行していますが、われわれは、業務モデル
とこれを扱える人間こそがより重要な成果物と考えます。ここに業務モデルの中
心は変化の少ないリソースデータ(商品・顧客・社員などのマスターデータ)と情
報システムの骨格を規定するメタデータです。
この業務モデルとこれを扱う人間こそが、金で買えない情報システムインフラの
中核と考えられます。これらがしっかりしていれば、ビジネス変化に最小限の遅
れで追随することができます。樹木で言えば根と幹です。枝葉は夏には茂り、
冬には枯れるわけですが、これがプログラムに相当するものと思われます。
本来はこのようなインフラとなる業務モデルと人材育成を第一の目的としたプロ
ジェクトを企画することが理想ですが、一般には難しい。そこである程度の規模
の開発の中でこのインフラを作っていく必要があります。システム開発は貴重な
人材育成のチャンスとして、これを活かさなければなりません。1990年代人が
育っていない最大の理由も、C/S化などが中心で、大きな開発がなかったから
だと思われます。
業務モデルの骨格はデータ項目が作りますから、データ中心アプローチは不可
欠なはずです。しかも対象とするスコープは、一般に全社の部分を形成するは
ずですから、孤島システムを作らないよう、全社アーキテクチャを念頭に置いた、
その位置づけを配慮したアプローチが必要と考えます。
情報システムの問題としては、「動かないコンピュータ」など要件定義や開発
プロジェクト管理に議論が集中していますが、「SIer的無機構造体の認識が前
提になっていないか。カットオーバーした日から陳腐化していく有機体としての
情報システムに、ユーザ企業としてどう対応すべきか。データインフラと、これを
可視化し適切な対応のとれる人間集団−今これをDMO(Data Management
Office)と呼びます−を用意することが大きな課題ではないか」。アウトソーシング
やERP導入による解決を企画する際、同時に考慮すべき課題として記述させて
いただきました。