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【第111号】守りのシステム・攻めのシステム

雪の便りが来て、平地でも紅葉が真っ赤に燃えています。インフルエン
ザ大流行などの不気味な予告もあります。うがいを励行し油断なく元気
にお正月を迎えましょう。
■システム
システムとは要素とその相互関係から構成されるものと考えます。これを
システマティックに構成すること、システマティック化こそがシステム化だと
思われます。その意味では、鉄砲を巧みに使った織田信長や、ベルトコン
ベアを使って自動車の大量生産を実現したフォードは、システム化の天才
だったと言えるでしょう。しかし今やシステム化とは「コンピュータを使った
情報処理の機械化」と限定した使い方をする人が多くなっているようです。


狙いは省力化や品質の安定化によるコストダウンだったわけですが、ここ
へ来てさらに経営そのものへの支援を要求する声が大きくなってきました。
すなわち、システム化への要求の重点が「オペレーション支援」から「意思
決定支援」へとシフトする、大きな転機を迎えつつあるように思われます。
そこで以下これを観点別に整理して考察してみたいと思います。
■ 観点別比較表\n概略をつかむために、A「オペレーション支援」とB「意思決定支援」について、
以下のようなマトリックスを作ってみました。
           A「オペレーション支援」      B「意思決定支援」
(1)目的      情報共有・処理・清書・通達   経営資源のタイムリな手配・配分
(2)観測/生成 発生データの観測・ストア    意思決定データの生成支援
(3)ユーザ    業務担当              TOPやLOB
(4)処理形式   OLTP・DBMS           OLAP・DWH
(5)業務形式   定型業務              不定形業務
(6)スコープ   業務内(P2P)           業務横断(A2A/B2B)
(7)投資基準   ROI、Me too            非ROI、My way
(1)Aはこれまでメインフレーム、C/S、ERPとして追求してきた20世紀の
課題と言えるでしょう。(1)BはBIとして21世紀になって話題にされることが
多くなったものかと思われます。経営資源としては、やはり人・物・金でしょう。
これらをどう手配し、各事業にどう配分するか、そのための意思決定データ
は何か、そのための意思決定元データとして何を提供すべきか。これが(1)
Bの課題だと考えます。
(2)Aでは、実務の世界に発生したデータをいかに正確に効率よく電子化す
るかが課題です。カードパンチ、マークシートは昔の話、GUIやPOSさらに
RFIDと進化してまいりました。電子化しDB化すれば、検索・処理・通信・共
有などすばらしい効果を享受することができるからです。(2)Bでは、意思決
定データに対する適切な元データを提供することが課題になります。ある製
品の生産計画数量を決めるにあたっては、在庫数量、販売予測数量、新製
品計画など種々の元データを提供する必要があるでしょう。来年新人を何人
採用し各事業部にどのように配分するか、そのための元データは何が適切
なのでしょう。
(3)Aは、生産・販売・物流・会計などのライン業務のオペレーションを担当す
る業務担当者がユーザですが、(3)Bは本来TOPや事業部中枢の経営にか
かわる方々がユーザとなります。ただし最近強調されることはスピード経営
のため、迅速な意思決定を行うべきLOB(Line of Business)がユーザとして
クローズアップされています。
(4)Aは、ビジネスの実態を遅れなく正確にDBに反映することが課題となり
ますので、OLTP型のDBMSの独壇場になります。(4)Bでは、分析やグラ
フ表示などの機能が要求される一方、若干の遅れは許容されるので、DWH
型のDBMSが主役となります。ただし最近はLOBによる迅速な意思決定が
重視され、オペレーショナルDWH、あるいはリアルタイムDWH、また全社を
スコープとすべきということからEDW(Enterprise Data Warehouse)と呼ばれ
るDWHが注目を浴びています。
(5)Aは定型業務ですから、ITの進化やスコープ拡大のため、何回も再構築
が行われましたが、個々の業務自体はさほど大きく変化することはありませ
んでした。企業横断のSCMも、(5)Aの範疇で考えられますので、接続にEA
Iで対応することが可能かと思われます。これに反し、(5)Bは不定形であり、
商品・顧客・市場などの変化に応じて、意思決定元データが大きく変化します
ので、柔軟なシステムが要求されます。業務横断のデータを自由に組み合わ
せる必要がありますので、データの変換による対応は難しく、リソースデータ
の一元化はほとんど必須となります。CRMが成功しにくいのは、これが(5)B
の範疇にあるためと考えられます。リソースデータ標準化不備のまま、従来の
定型業務の感覚のアプローチを行っていては、結果は得にくいと考えられます。
(6)Aは、徐々にスコープは拡大したものの、従来の単一業務のシステム化
の範疇にあったものと言えるでしょう。ERPもこれまでのものは、大規模単
一業務のアプローチを複数業務に適用した試みに見えます。ORACLEの
FusionやSAPのNetweaverはこれを反省し、修正したものと見えます。(6)B
のスコープはは基本的に業務横断を主体としたもので、A2A(Application
to Application)が基本です。これはSOAが注目を集めている一因とも思わ
れますが、A2A通信場でのデータ標準化が前提であることを忘れてはなり
ません。こうして(6)Bの標準化は、P2P(Program to Program)とA2Aの2階
層で行われ、フェデレーション・アーキテクチャの高いスケーラビリティを用
意することになります。
(7)は何が投資基準になるかです。(7)AではROIが使われてきてそれなりに
妥当であったかと思われます。同種企業のやり方を“Me too”で真似るのが
リスク回避の適切な方法だったのでしょう。戦略を問題とする(7)Bでは、RO
Iとしては非常に長期のROIになるでしょうから、リスクを覚悟した自らの意思
決定“My way”になるはずです。ROIは、これを求めてもGOは出せません
から、却下するための方便としてしか使えないものかと思われます。
■まとめ
以上、A「オペレーション支援」とB「意思決定支援」を対比して考察しました。
Aはなくなるものではありません。Aの上にBが構築されます。多くのシステ
ム関係者はAの感覚で、システムを作り運用してきました。その結果、孤島
システムが乱立して、保守に、またBのニーズに対応できず困っています。
特にOO系の方からBへの配慮が聞かれないのが心配です。21世紀のシ
ステム開発・保守の文化を創っていくとき、Bは不可欠と、私は考えます。
この流れを主導するのは誰でしょう。切り出された個別アプリケーションを受
託するスタンスのSI業者には難しいテーマです。やはりユーザ企業のCIO・
企画部門に期待せざるを得ません。そのとき対象が広く、試行錯誤が入いや
すいので、企画がポイントになります。企画が不適切だと、時間やコストがか
かって、途中で挫折する心配があります。したがって、ややコマーシャルに
なってしまいますが、全社データモデルのパターンを心得たコンサルタントを
活用し、試行錯誤を最小限にして、早目に効果をアッピールしながら進める
のが、最も有効な現実解のように思われます。
このとき、システム投資に係わるCIOの方々に考えていただきたいこと。
それは「Aは守りのシステム化ですから、ROIが使えます。しかしBは攻め
のシステム化ですから、ROIによってリスクヘッジする意思決定は、適切で
はないのでははないか」と言うことです。
■お断り
本DRI通信に関する事前レビュー頂いた2人の方から、「このA、Bと7つの
観点では説明しきれないことがある。Long Tailによるアマゾンやグーグル、
また直販のデルなどのシステム化はオペレーショナルだが、戦略的だ。C
として『ビジネス空間創出型』を考えるなどが必要ではないか。またオペレ
ーショナルでもROIで意思決定できるとは限らない」などのコメントを頂き
ました。どう整理すべきか少し時間をかけて考えた方がよさそうだというこ
とから、今回はペンディングということにしたいと思います。良い示唆があり
ましたらお寄せください。