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【第64号】保守の実態

DRI通信64号「保守の実態」 2002.1.1
21世紀第1年目は、テロと不況のなかあっという間に過ぎて行きました。問
題は常に発生するもの、これを解決しながら進めるのが人生と、明るく前向き
にがんばりましょう。
さて先月の63号では、弊社の取り組んだ実験的プロジェクトをもとに、レガシー可視化
を扱いましたが、今月はアンケートやK2W勉強会での議論から、保守の実態およびある
べき姿についてまとめることにしました。なおこの64号をもって、K2W勉強会報告を
も兼ねたいと思いますので会員の方々よろしく。
■会員アンケートから
K2W会員の方々にアンケートを依頼し、ご協力いただきました。ソフトハウスなどで保
守案件を持っておられない方々もあり、12件のご回答しか頂けませんでしたが、平均的
には次のような実態でした。
・保守ボリュームは、予想以上に具体的に把握されていない
・保守要員が何人かは、あまりはっきりつかまれていない
・一般には開発に関わったSE・プログラマが主体で保守を担当している
・知識は、先輩からOJT的に受け継いでいる
・手順・フォームを決めて実施するケースがほとんど
・プログラムを直接トレースしている
・保守のスピード・コストが問題になっている
・その原因は改訂箇所の特定に時間がかかること
・方法論・体制・ツールによってこれを削減するつもり


また大まかには次の3レベルに分類できるようでした。
L1:保守のための配慮がほとんどない原始的保守体制のところ(30%)
L2:EXCEL、LIBRARIANなど汎用ツールを活用しているところ(50%)
L3:リポジトリを活用し本格的に保守に取り組んでいるところ(20%)
印象的だったのは、L3の2社であり、「本番移行のシステムにより、リポジトリ登録を自
動化する」、「データ管理をまじめにやり、日本語COBOLを活用する」などにより、改訂
箇所がはっきり把握され、システム劣化が少なく保守問題がほぼ解決されているとのことでした。
■情報資源管理(IRM)調査から
K2Wとは別に、弊社では本年8月から9月にかけてIRM成功の要因をさぐるために実
態調査を行ってきました(PLAN−DBユーザにはSKHレポートとして送付)ので、
これを報告しました。PLAN−DBユーザ27社を含む30社からの回答に基づく分析です。
全般的には「システム部門が、ソフト主体のIRMをそこそこやってある程度の効果を出
しているが、ビジネスユーザのためのナレッジマネジメント、そのためのデータの標準化
としてはまだまだ」といた実態でした。やはり今までは当面のソフト開発のためのIRM
が主目的でしたから、当然といえば当然といえるでしょう。
■レガシーシステム可視化から
弊社の実施した実験的プロジェクトでの知見を紹介いたしました。保守に伴う不要データ
項目やロジックの削除は、影響範囲が読めないためリスキーであり、かつテスト作業を必
要とするため、原則として行われません。したがってデータ項目やロジックの追加のみを
行うので、ソフトは増大の一途をたどることになります。
さらに、レコードインターフェースの場合は、レコードフォーマットを変えたくないとし
て、冗長データの発生に目をつぶって別途レコードを増設するという「田舎の旅館の別館
増設方式」のような屋上屋を重ねる方式もかなり行われているようです。この場合発生す
る冗長データは、アクセス効率を上げるための非正規化による冗長のような生易しいもの
ではなくなります。「あまりにも短期メリット優先が強すぎて、ソフトは若死にさせすぎて
いないか」、「プラントの定修概念をいれて寿命をのばすことが必要ではないか」と問題提
起いたしました。
また「レガシーシステム可視化(LSV)にもいくつかのレベルがあり、システムの劣化
度、再構築の計画などにより、また可視化の目的、たとえば開発管理、保守要件定義、保
守合理化、再構築準備などに応じて、適切なレベルを設定すれば十分なROIが得られる
のではないか」と問題提起しました。
■討議
以上を踏まえ討議に入りました。ややまとまりを欠いたかとも思われますが、以下のよう
な貴重な意見を頂くことができました。
・不良資産を減らせ
「ソフト開発の生産性といって、開発ステップ数/月などを競い、うちは何千万ステップ
あると誇らしげに言う時代があった。ステップ数はデータ項目の数による。『うちは85万
ステップしかありません』という方が正解ではないか。不良資産は処分してもっとスリム
になるべきである。」
使われないソフトは不良資産である。製造業なら処分の対象だ。JCL情報とジョブの実
行ログがあれば簡単に分かる。これを提供しないのはメーカーの怠慢である。ディスクを
安くして問題解決としているかもしれないが、管理コストが上がるので問題である。」
・IRMの対象
「全てのデータについて、プログラムまでトレースできないと使えない。」
「LSVでは物理ファイル項目はすべて扱うが、概念データとの紐付けはできないものが
残る。アフリカ大陸に高速道路まで作るようなものだ。分析できなかったものはサブスト
ラクチャとして切り出し別途表示する。保守の際詳細が明らかになれば、これを反映し次
第に精度が上げられる。」
・ソフトは保守しないのが正解
「ソフトは業務仕様、プラットフォーム仕様、ソフト化標準仕様によって決まるハードな
もの。これを直接メンテするのでなく、それぞれの仕様別にメンテし、プログラム生成す
るのが正解。」
「かつて物理ファイルをもとにリバースかけて、泥沼にはまったことがある。いまやレガ
シーは触らず、繋ぐ時代である。」
・ユーザのためのLSV
「ユーザ部門がビジネスモデルを設計しSIに委託する時代が来る。ユーザ自身要件が分
からなくなっており、物理ファイルからモデリングする方式があるのではないか。ラフな
ものでもベースがあれば、初心者でも業務ノウハウがありエンティティの見える人はモデ
リングできる。」
・人造りのため
「今までSEは方法論無し、経験とセンスだけで仕事してきた。データモデリングによっ
て、技術武装し、SEの底上げをしたい。」「最近は、新規開発はもちろん再構築すら少な
くなってデータモデリングによって人を育てるチャンスが減っている。LSVはそのチャ
ンスをつくるものだ。」
・工学の発想が欠如
「部品を扱っているのに、部品表がないというのは、製造業では許されないこと。情報シ
ステムは職人感覚で作られてきて、工学の発想が欠けていた。」
・反対の論理
「現状は、ベテランにとっては希少価値があり、むしろハッピー。またソフト業としては
来期の売上げが見込め現状はありがたいとも言える」。「ソフトは5年償却のもの、はたし
てLSVがビジネスとして成り立つか。難しい。」
■おわりに
ご意見は以上のようなものでしたが、「ソフトの保守と標準データの保守とは分けて考え
ないと混乱する」と感じました。ERPから始まってDWH、SCM、CRM、B2Bな
どデータの流通が要求されてきています。データ流通のためには、その形式と同時に意味
が一致しなければなりません。それはデータ標準化そのものです。ソフトの保守のベース
にもなりますが、近視眼的には標準化を無視して保守することができます。
したがってデータの標準化を、保守担当者としては、当面の目的に限定して二のつぎに置
かざるを得ないことがありますが、同時に開発者・保守担当・ユーザ、それも自社のみな
らず顧客、パートナーを含む多くの関係者は、重要な永遠の課題としてこれに取り組まな
ければならないはずです。相反しやすい2つの課題を分離したうえで正しく認識し、与え
られた状況の中で、如何にして妥当なROIを達成するかが問われているものと思われます。
なお弊社で計画しております恒例のセミナー通称「DB研」(1月30日@アルカディア市
ヶ谷)では、レガシーシステムの可視化によるナレッジマネジメントや保守の問題を扱います。
ご関心のある方はぜひご参加ください。