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【第57号】SAの見方とDAの見方

DRI通信57号「SAの見方とDAの見方」2000.6.1
夏場所千秋楽、小泉総理は貴の花のがんばりを称えて「感動した、ありがとう」
とのアドリブを添えて総理大臣杯を渡しました。森では考えられないこと、イチ
ロウもそうですが、本気でやる個人の力は決して小さくないことを感じました。
弊社も小さい会社ですが、本気で取り組む集団にしたいとあらためて思った次第
です。
さて今月は、情報システムの抱える問題の根本に、普段あまり議論されていない
SAの見方とDAの見方が影響しているのではないかと、問題提起することに
いたしました。なんなりとご意見頂けたらと思います。
■レガシーシステム
ITの変化が激しい。メインフレームをクライアント/サーバーに変え終わ
らないうちにWebだ、モバイルだと言われる。VB、C++と騒いでいた
のに、もうJava、XMLを習得しなければならない。一方業務要件の変
化も激しい。DWH、ERPが卒業できないうちに、SCM、CRM、
eCRM、B2C、B2Bなどの3文字略語が次々と登場してくる。この変
化によって、アプリケーションの寿命が短くなる。かなりの金を掛けて作っ
たシステムが10年と持たない。


そこで再構築ということになる。企業のアプリケーションは、程度の差はあ
るが何らかの形で他と連携しており、決して孤立していない。部分的な再構\n築は歪み・不整合をもたらす。これを解決するものとしてERPパッケージ
が登場したが、実際のところ、ERPのねらいどおりのビッグバンを実現で
きた企業は、例外的に比較的若い中小規模の会社において見られるに過ぎない。
恐らく5000人以上の大企業では、ERPを入れても、大部分の他システ
ムはレガシーのまま残され、相互の連携を如何に取るかに苦心されているケ
ースが多い。したがって自社開発となればなおのこと、より多くの部分がレ
ガシーとして残されることになる。レガシーシステムの保守要員が80%を
越える会社もあると言う。
■SAとDA
この場合、再構築担当のSA(System Analyst)としては、自らの職務に忠
実に、陳腐化した旧システムを、一日も早く新システムに置き代えユーザの
期待に応えようと、時として徹夜も辞さず頑張ることになる。しかしこのと
き念頭にあるのは、みずから担当している当該システムであり、大半を占め
る他のレガシーシステムではない。
一方、DA(Data Administrator)−そのような役割の人を持ってない企業
も少なくないが−の見方はやや違ったものとなる。DAは全社システムをス
コープに入れてデータ管理を行わなければならないから、確かに問題の一部
は解決しつつあるが、解決の目処の立っていない暗黒大陸のように残された
レガシーシステムが、DAには見える。
所定の期間内に成果を求められるSAが、固定したスコープで物事を見るの
は当然である。SAにとっては当該開発が終われば一件落着する。一方期間
の限定なしに成果を求められるDAは、固定的でない、すなわちオープンな
スコープで物事を見る。東京都の地下鉄工事ではないが、DAにとってはい
つもどこかが工事中であり、一件落着はない。しかもSCM、B2Bとなれ
ば、その範囲が広がることはあっても、小さくなることはない。
■行き詰まり
目的の限定された開発/再構築プロジェクトであれば、責任ははっきりして
おり、失敗すれば誰かが責任をとらされる。しかしレガシーシステムの保守
であれば、いくら遅くても、人や金が掛かっても、責任は追及されない。
20年前に開発され基幹業務を支え、十分お役目を果たしてきたが、いまや
開発担当者がいなくなり、ブラックボックス化が進行して手が掛かるように
なった、というのであれば、誰の責任を追求するわけにもいかないからである。
会社を動かすために基幹系はなくてはならない。しかし保守のたびにドキュ
メントは劣化する。担当者が異動する。異動しなくてもその記憶が劣化する。
だから保守効率は下がることはあっても上がることはない。そのようなレガ
シーシステムの保守に、要員の60%以上が取られている。再構築によって
解決したいが、もはやレガシーが大きすぎる。「保守に人が取られて再構築
要員がいない」といった悪循環に陥っている大企業も少なくない。それなの
に要員削減が意思決定される、そんな話しもしばしば耳にする。
原因はシステムに取り組むコンセプト/アプローチにあるように思われる。
近視眼的に課題を限定しシステム化を積み重ねてきたアプローチそのもの
に問題があるのではないだろうか。SAの見方だけで、DAの見方が欠落な
いし不足していたのではないだろうか。いやDAの見方を持った情報システ
ムマネジメントが欠けていたのではないだろうか。金融機関は3次オンライ
ンまではやったが、もはや4次オンラインには取り組めない。合併して人と
金を集中しても、いままでのコンセプトでは根本的解決は難しいと思われる。
東京都のごみ問題、地球のCO2問題と同様、劣化し肥大するレガシーシス
テムは破局を待つ以外に打つ手はないのだろうか。
■インターフェース先行
DAの見方とは何か。その本質はインターフェース先行の見方である。シス
テムとシステムはインターフェースを介して繋がるが、システムの仕様より
先にインターフェースの仕様を固定する。これによって各システムは他シス
テムの変更の影響を受けないようにできる。
インターフェースはデータの集まりであるから、インターフェースの仕様の
固定とはデータの仕様の固定に他ならない。たとえば営業から工場(関連会
社や他社かもしれない)への次のような生産依頼(インターフェース)があ
ったとする。
[生産依頼#]‐(自組織c、至組織c、品番、数量、年月日)
これが機能するためには、組織c(cはコードの意)や品番について、営業
と工場は同じ認識を持たなければならない。1対1の対応が取れるならば、
桁数や文字の違いは変換で解決できるが、集合の大きさや粒度の違いがある
と簡単ではない。これらの違いは事前の標準化がないとき、あるのが当たり
前である。
人手と紙の時代は、人間が柔軟に対応してしのいでいても、機械化の環境で
はこのようなインターフェースの不整合が致命的になる。人・物・金につい
て事業部別に運営したその成功体験が、データ/情報に関しては失敗の原因
となる。情報システムは、今や情報システム部長では解決しきれない経営問
題となっているが、その問題の核心を理解している経営者は例外的である。
■業務モデルリバースエンジニアリング
弊社では、この問題に対処すべく、方法論、教育コース、コンサルタントを
用意して来たが、従来はやはり新規ないし再構築による解決に留まっていた
かと思う。しかしどこかでこの暗黒大陸のようなレガシーシステムに取り組
まなければならない。触らぬ神、タブーとして避けていてはいけない。これ
を可視化し、保守合理化に取り組めるのはわれわれ以外にはいないかもしれ
ないと、ツールTHeRepository開発を機に、これを活用する方法論「業務モ
デルリバースエンジニアリング」の開発に取り組むこととした。すでにシナ
リオはできているが、どの程度のROIになるかは今後の実証課題である。
題材を提供しご協力いただける会社には是非ご連絡いただきたいと考えている。
(注)DA(Data Administrator)とは何か。まだこのような職種を持って
いない会社も少なくないので若干説明する。ここではDM(Data Manager)
を含めた広義のデータ管理者を意味している。製造業における部品管理者に
相当する。主な役割は、品番、取引先コード、受注区分、商品単価と言った
データ項目の仕様の標準化、一元管理である。直接データモデリングを行う
こともあるが、むしろこれを指導し、普及し、統制することが重要である。
ツールとしてリポジトリを活用する。正しくはデータ項目以外の情報システ
ム部品も統合的に管理するから、情報資源管理者と呼ぶべきであるが、まだ
この言葉は一般的でない。標準化は1プロジェクト内から、1企業内、さら
に企業群に拡大しており、これを支える優れたDAの育成は、今後の企業競
争力に大きな影響を与えるものと思われる。