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【第31号】戦略と戦術

DRI通信31号 「戦略と戦術」 1999.4.1
桜が咲いて、新年度が始まります。昨年度は弊社も厳しい決算を強いられること
になりました。DOAでは、情報システムについて標準データから構成された画
面・帳票がその製品であると考えます。このためその文化を持つ製造業−それも
官庁的でない−に広く受け入れられてきましたが、その製造業が不況のダメージ
を受けたことが、2000年対策やERPに劣らず大きかったかと思われます。
しかし21世紀,DOAなしでやっていかれるはずもありません。データインフラ
を作り、運用し、メンテする、技術的・教育的・マネジメント的ノウハウの開
発・蓄積・普及に、弛まずがんばりつづけたいと考えております。
先の号外について、三菱製紙田中晃様より、「今般の「DRI通信<号外>」
は、私にとっては待ち望んでいたものです。大袈裟ではなく、非常に感激してお
ります。…昨今、ERPあるいはDWH(場合によっては両方)の導入を検討す
ることが、IT部門のミッションあるいはトレンドと云われております。しか
し、この「BMHub Architecture」(本来のDOAだと考えますが)の考え方が定
着すれば、BMHubをベースにした「概念DB」を作ることが先決であることが「常
識」になるものと考えます。この「概念DB」が出来れば、ERPのカスタマイ
ズの発生や、生産管理ではSAP社のR/3ではなくBAANあるいはOracle
Applicationsを導入せざるを得ないといったことが、「問題」ではなくなるもの
と思っております。…」また、帝人システムテクノロジー安原様より、「オープ
ン化の英断を支援します。」など励ましの言葉をいただきました。ありがとうご
ざいました。


今月はDOA普及に当たって、30年来いつも遭遇するマネジメント問題、戦略
(Strategy)と戦術(Tactics)について、素人考えの域を出ませんが、述べてみたい
と思います。ご教示大歓迎です。
何をもって戦略的と言うのでしょうか。囲碁における「捨て石」、将棋における
「攻め合い」や「切らせ」は戦略的です。経営においては、「方向付けとスピー
ド」だとの声があります。
元来は戦争の用語でしょう。辞書には「大局的」とあります。地理的に局地戦で
なく、大局的戦争を指したものと思われますが、時間的に短期でなく長期、また
論理的に単一目的でなく全体目的への指向を言うように思われます。しかも単に
2年が10年に変わるといった量的相違でなく、そこに何らかの質的相違があること
を前提に、述べられているるようです。
ERP、インターネット, 先の号外に述べたBMHubといったインフラは、戦略的成
果物です。ERP失敗の多くは、戦略的ソフトを戦術的に使おうとして起きてい
るように見えます。誰でも初めは直ぐ結果が得られ、ROIの計算に乗る戦術的
アプローチをします。そこでいろいろな問題に遭遇し、痛い目に会って初めて戦
略的アプローチをし始めるようです。
大勢の人がいれば、経験したがって進化の段階が違います。そこで戦術派と戦略
派が生まれ論争が発生します。一般論ですが、戦術派の主張は「実績がない」、
「間に合わせる自信が無い」です。戦術派はまだ懲りていませんから、戦略派の
主張のイメージが描ききれず、十分理解できません。分からないものの評価はど
うしても低くなりますから戦術しか取り得ないことになります。しかも戦略の論
理はROIの計算が適用できない弱みがあります。このため両者の間の実りある
議論は難しくなりがちです。
DBMSは本来戦略的なソフトだと思います。私事で恐縮ですが、1975年頃エン
ジニアリングアプリケーションもOS下でなくDBMS下で動かすべきと、エン
ジニアリングDBMSを作ったところ、「屋上屋を作る気か」と理解が得られな
かった痛い思い出があります。
LANよりインターネット、物理DBより概念DB、ソフトウエアリポジトリよ
りビジネスモデルリポジトリがより戦略的です。クライアント/サーバーはス
ケーラブルですが、戦略的かどうか、はっきりしません。
戦略は過去の実績を抽象化したモデルをベースに作られるのだと思います。現状
をベースに摺り足で進むのでなく、一旦ジャンプします。陸軍の歩兵のようにで
なく、空軍の落下傘部隊のように、まず本来あるべき姿を描いてから、次にこれ
と現状を繋ぎます。顧客の要望に一つ一つ対応するというより、これらをモデル
化し総合的に解決する方法を考えます。そのためアーキテクチャの変革/断絶を
必要とすることが多いと思われます。
アーキテクチャの変革/断絶によって、いわゆるChange
Curve における失望の谷
間をクリアする課題が発生します。これを聞くと私は化学反応の活性化エネル
ギーの話を思い出します。水素と酸素は、水になった方が安定なのですが、その
まま置いておいても反応しません。触媒を使って活性化エネルギーを小さくする
と激しく反応して水になります。高い所の水は低いところに移動した方が安定で
すが、堰があればそこに留まります。堰を壊せば水は流れます。堰を壊すエネル
ギーがい要ります。
より安定した状態に移行するのに、一時的に変革を起こすエネルギーが必要にな
ります。抽象化して作ったモデル、これに基づくアーキテクチャに自信がない
と、このエネルギーが出てきません。DOAへの変革が難しいのは、技術的にも
マネジメント的にも抽象化のアプローチが必要なためと考えられます。
かのJ. A. ZachmanはData to Knowledge Newsletterのなかで「アーキテクチャは
反文化的である。企業はまだそれを生き残り問題だと考えていない」、また「企
業アーキテクチャはまもなく情報時代にプレイするための入場券となるだろう」
と述べています。
この所の日米の経済の差は、ホワイトカラーの生産性の差だと言われたりします
が、私はとくに日米CIOの差が大きいと考えています。ERPやSCMなどの
話題によって、TOPも情報問題に引っ張り出される機会が多くなってきました
が、まだまだ「情報は分からん」として逃げているTOPが日本には多いのでは
ないでしょうか。
原因のひとつは、説明をする情報部門の人が、ITの話しをすることだと思いま
す。ぜひIT独立にビジネスモデルの話をしてほしい。ビジネスモデルとは経営
そのもののはずです。システム部門では部門内システムしか手がけにくい。全社
的企画はやはりTOPに期待しなければならない。「いくら儲かるか」と言う戦
術レベルの意思決定しかできないTOPばかりではないと思うからです。
実装問題はアウトソースしてよい。しかしベストプラクティスを実現するビジネ
スモデルだけはしっかり記述し掌握し育てて、日本の復活を実現したいと思いま
す。