椿氏の「情報システムの構築にサイエンスを持ち込みたい」という思いはすばらしい。私も充分理解できますし、同意できるところが沢山あります。
しかし一方で、私自身は仏教哲学の影響を受けています。
(今回はいきなり哲学の話ですいません…)
仏教哲学で学んだ概念の1つに「相互依存」があります。
サイエンスは、自分が研究するテーマ(部分)を全体から切り出し、切り出した部分の中で研究し、新しい法則や式を発見します。その部分を全体に戻したとき、その法則や式が全体の中で有効であると考えます。しかし、本当のところ、それらの法則や式がどこまでも広がって、全体として正しいとされることは難しいのです。たとえば、相対性理論の式が、量子力学の分野にまで広がって、有効であることはないのです。
世界を構成するすべての要素は相互依存の関係にあります。部分を全体から切り出したとき相互依存の関係が壊され、部分を全体に戻したときに相互依存の一部は壊れたままです。ですから、二つの研究領域 - たとえば相対性理論と量子力学 - が同じ式で表現されないのは、当たり前なのです。
椿氏が、情報システムの構築にサイエンスを持ち込むとき、興味の中心である概念レイヤーを全体から切り出します。このとき概念レイヤーと論理レイヤーの相互依存が切り離されます。概念レイヤーの中で美しい法則を見つけたとしても、論理レイヤーの要素が入ってきたとたん、解けなくなることもあるのです。情報システムの世界は、実際に動くものを造らなければなりません。その立場で見ている人は、概念レイヤーだけの純粋さを、無力に感じることがあるわけです。
椿氏の場合、概念レイヤーと論理レイヤーを含めた世界は、サイエンスではなくエンジニアリングで解くべきと言っているように思えます。

























