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標準化の壁を越えよ

業界全体ではなく、企業内でシステム開発方法論などを標準化する場合、さまざまな障害があります。
標準化に成功している企業は、最初に遭遇する壁を上手に乗り越えています。
最初の壁とは、標準化された作業手順・成果物を適用すべき最初のプロジェクトで、「策定された標準を使わない」という壁です。


方法論の標準化を数多く支援してきましたが、「標準を使わない」と主張する人は、次のようなことを言うのが一般的です。
1)理解不能・知らなかった
「その標準に記述されている作業手順や成果物を使う意義が理解できない。あるいは、標準を使わなければならないなんて俺は聞いていない」と担当者が主張します。
「理解できない・俺は聞いていない」は、「とうせんぼ」の発言です。これ以上先には進ませない、という意図が見え隠れします。もちろん、単純にわからないと言う人も多くいます。
いずれにしても、きちんとした説明や納得の時間が必要になります。
2)慣れていないのでリスクがある
「その標準を使うのは初めてだ。あるいは慣れていない。だからリスクがある」と主張する人もいます。要するに、「今までのやり方で実施させてほしい」と言いたいわけです。担当者の気持ちもわかりますが、通常は新しい方法論に慣れている人がそばに居て指導することによって、この種のリスクは回避できます。
3)今回のプロジェクトは特別である
「今回のプロジェクトは特別だから、標準を適用しなくても良いのではないか」と主張します。そういった人は、「特別」である理由をいろいろと考えて持ってきます。たとえば、規模が大きい、現状分析の結果と新規設計の結果が変わらないから、標準の手順でやらなくても良いだろう・・・・など。しかし、「特別」に該当するケースはほとんどありません。また、担当者が思った以上に、標準書が緻密に作成されていることもあります。
4)私が担当なのだから私のやり方でやらせてもらう
「私が担当なのだから私のやり方でやらせてもらう。どうしても標準を使えというのなら、私はできない。」と主張する人もいます。一般に、日本人は事を荒立てないように振る舞いますから、担当者をプロジェクトからはずすこともできず、まずい状況になることもあります。しかし、この主張は筋が通りません。何をどのように良くしたいかという意思がないからです。
標準化の目的・ねらい・効果を理解してもらえるように説得するのが一番ですが、その人をプロジェクトからはずすことも考えておかねばならないでしょう。
5)時間がない
「納期が厳しくて、標準どおりの作業手順で実施すると間に合わない。」と主張します。「ではどのような作業手順・成果物で実施するのですか?」と確認すると、大抵の場合、複数の工程を並行して実施するスケジュールを見せられます。「これで品質が保てるの??????」って感じです。もともと無理なスケジュールは、標準を使っても使わなくても成功しません。
さて、これらの主張は、今回のシステム開発にとらわれすぎて、標準化の目的に関しては何もふれていません。
すなわち、標準化の目的とは、個人ではなく企業として
・同じ成果物を何度も作成することになるため、ノウハウをマニュアル等の形式で蓄積できる
・同じ成果物を何度も作成することになるため、スキルが人に定着し、人材育成につながる
・製造物の品質のばらつきを防ぎ、いつも良いものを造れるようになる
・標準手順が決まっているため、過去の実績データを参考に、より精度の高い見積もりが可能になる
・本来あるべき役割・作業分担になることで、各作業担当者の生産性を高める
といったメリットがあります。
最初の壁を乗り越えて、標準化の果実を手に入れてほしいものです。

黒澤 基博