実世界には「もの」があり「こと」がありますが、我々はこれらを正確にモデル図に写像できているわけではありません。必ず、「人が認識する“もの”」、「人が認識する“こと”」の表現になってしまいます。その意味で、ビジネス世界のモデル化の対象とモデル図に表われる対象は、ピッタリと一致するわけではありません。
モデル図は、実世界のある一面を表現しているだけなのでこの2つが一致しない、とも言えますが、本質的なところは、人の認識だから一致しないと言えるでしょう。
人が何かを認識するとき、必ずことばを対応づけます。ことばがあるから存在すると言うこともできます。
目に見えるものにことばを対応づけないで認識することも可能ですが、それを思い出そうとするとき「あの夕日がきれいだった海岸の景色」とか「濁ってあふれた川」とか、自分の頭の中で、ことばが対応してしまいます。これは無意識です。人はことばを使った認識法にとらわれている、と言っても良いでしょう。
切れのよいモデリング手法を身につけると、実世界の対象とことば化した対象のずれに悩むこともあるでしょう。私は、ある日、実世界の対象をピュアに表現することはできない、と思うようになりました。私がモデル化しているのは、人々が共有することができる、あるいは伝達することができる“記述”です。モデル化の対象に割り当てることばをどこまでも洗練させて、1つの意味を対応づけるとき、美しいモデル図が出来上がります。
ビジネス世界のモデリングでは、ことばが揃うから意識が揃うのです。

























