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「出来事」よりも先に「もの」を認識する

「もの」中心の概念データモデリングでは、「出来事」よりも先に「もの」を認識します。「ものを最初に認識する方が簡単である」という主張は、前提となる条件があれば正しいでしょう。しかし、その条件を理解することなく、単純に受けいれることはできません。


たとえば、鈴木一郎、佐藤次郎、山田三郎という「人のインスタンス」を「出来事」と無関係に認識することは可能であっても、エンティティとして名前をつけようとしたときに困るからです。そのエンティティ名は、人、社員、顧客、住民・・・・など、いろいろ考えられます。さて、どのエンティティ名が正しい実世界の写像でしょうか?
顧客がそのエンティティ名として正しいとすれば、そこには暗黙のうちに、何かを「売る」相手、を想定しているはずです。つまり、顧客という言葉を選ぶ際に、前提とする「出来事」が存在する、と私には思えるのです。あるいは、直接的に「出来事」を認識していなくても、「販売業務領域」といった「場」を前提としているはずです。この時も、「場」を形成する中心にあるのは「販売する」といった出来事だと思います。
インスタンスではなくタイプ化された「もの」を認識する際、「もの」だけを「出来事」と無関係に認識することはできません。「もの」の認識は、「出来事」の認識を必要とするからです。

黒澤 基博