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言葉の性質と概念データモデル

先のデータマネジメント通信32号「概念モデルの重要性」の中でフェルディナン・ド・ソシュールの言語学に触れましたが、読者の方から「少しでも良いから何か説明してほしい」との要望がありました。そこで今回は、言葉の性質と概念データモデルをテーマにします。

フェルディナン・ド・ソシュールは、彼の言語学のなかで、シニフィエとシニフィアンを紹介しています。シニフィエとは語によって表現される対象そのもの、シニフィアンは語の持つ表現です。たとえば、表現される対象そのもの「腕」シニフィエに対して、「腕(という文字)」「うで(という音)」がシニフィアンです。英語では、「arm(という文字)」「アーム(という音)」が対応します。

我々が改めて意識すべきは、普段ビジネスの世界で何気なく使っている「言葉」が、実世界の「対象」と対応していることによって、意思の疎通が可能になっていることです。

腕は肩から手首までの体の部分を表しますが、「腕(という文字)」や「うで(という音)」は、何か必然性があって決められたわけではありません。たまたまそうなっただけです。英語では、「arm(という文字)」「アーム(という音)」が同様にたまたま割り当てられ、同じ概念を表す語どうしなので、通訳も可能になります。

日本では、「腕を上げた」という表現があります。文字通り、腕をある高さまで動かすことを指す場合がありますが、他方で「上達した」という意味を指す場合もあります。後者の場合、「腕」が表している「対象」は、「技量、仕事をする能力」です。英語では「ability」や「skill」に対応します。

言葉の性質として、私が着目している点は次の3点です。
1)1つの「言葉」が受け持つ意味的な「対象」が複数存在することがある。その逆もある。
2)何の必然性もなく、適当に意味の守備範囲が決められている。
3)「言葉」と「対象」の対応関係は、文脈、地域、時代、文化によって異なる場合がある。もちろん、日本語や英語などの言語が違えば基本的に異なる。

さて、概念データモデルの世界に話を移します。概念データモデルを作成する際に、エンティティ名として選択する言葉の多くは、ビジネス部門の人達が普段使っている業務用語です。エンティティ名とそれが表現する意味内容は、前述の「言葉」と「対象」の関係に依存します。つまり、適当に意味の守備範囲が決められ、1つの「言葉」に複数の「対象」が対応しても不思議ではありません。

エンティティ名として「顧客」という「言葉」を選んだ時、指し示す「対象」が「受注先」「出荷先」「請求先」など、部門によって異なるのでは困ります。概念データモデルがコミュニケーションツールとして機能しなくなるからです。

概念データモデリングとは、エンティティ名の裏側に隠れている本質的な意味内容が、人によってずれていることを修正する作業です。
(次号に続く)

データ総研 コンサルタント