リーマンショック以降、抑えていた情報システムへの投資がやや持ち直したのでしょうか、最近また再構築案件が増えてきました。
今回は情報システムの再構築に関する話題です。
情報システムを再構築する際に、こだわるべきことは「サイロからの脱出」です。
サイロとは、情報システム間で正しくコミュニケーションできない状態を意味しています。
海外の文献では、アイランドシステムとか、ストーブパイプと言われることもあります。
情報システムの構築を歴史的にみると、メインフレームを利用していたころは企業全体で情報システムのあり方を統制しやすかった時代でした。
単一のシステムアーキテクチャであり、紙で運用されていた業務をコンピュータ化することが重視されました。
いまほど各業務が統合されていることを求められていませんでした。
しかし、オープン化が進み、比較的短い期間で多くの情報システムを構築しなければならない時期が到来し、全体整合性よりも早く安くつくることが優先されました。
その結果、全体でみると最適化されないサイロ状態が出来上がりました。
一方で、全体最適化の範囲が広がってきたことも、サイロが敵視される原因と考えています。
いままで、1社内に閉じていた情報活用の範囲が、グループ企業やSCM全体に広がってきたのです。
情報活用の視野が広がり、その広い範囲で情報システム同士がコミュニケーションする必要が出てきたため、いままで以上にサイロが問題視されています。
サイロの症状をいくつか挙げてみます。
1)マスタデータの冗長性
同じ意味のマスタたとえば顧客マスタなどが複数システムに存在します。
このため、複数マスタを統合するマスタをつくったり、変換機能を用意することで、読み替えを可能にしています。
変換テーブルの維持に大きな工数がかかるという問題や変換時のデータクオリティ問題を抱えています。
2)イベントデータの冗長性
同じ意味のトランザクションたとえば受注などが複数システムに存在します。
本来であれば1つのシステムで済むところ、何らかの理由で複数システムで実現してしまった事例です。
再構築の際は、複数システムを統合した1つのシステムとして実現すべきです。
最近はグループ企業の中で、複数システムを統合する事例が増えています。
3)インタフェースのスパゲッティ状態
新しいシステムが発生するたびに、個々にインタフェースを造ったために、このような状態となりました。
スパゲッティ状態から抜け出すためには、ハブアーキテクチャに移行する必要があります。
4)変化することを前提としたアーキテクチャ・方針
インフラの世代が異なるため、いったん同世代のしくみにデータを変換する必要があります。
あるいは、パッケージと手造りのシステムが混在するため、そのギャップを埋めなければなりません。
これらの現象に対応することは当然なのですが、問題なのはさまざまなシステムが混在することを前提としたアーキテクチャが無いことです。
マスタ管理やインタフェース管理では、アーキテクチャの面で最適化していく方針が不可欠です。
これが無いため、対応が個々になり、複雑性を増しています。
相次ぐ企業統合やクラウド化の促進により、サイロができやすい状況がまだまだ続きます。
全体最適化のシナリオが無い再構築は、どれほど最新の技術を適用しようがレガシーの再製造にほかなりません。
成熟度が高い情報システム部は、造れば造るほどスリム化し、造れば造るほどインタフェースがハブに集約していくシナリオを持っています。